桜梅桃李



<   2014年 01月 ( 6 )   > この月の画像一覧


素朴なひと

c0234001_204330100.jpg息子の作品



























今年はTさんからの年賀状が来なかった。

こちらからはほとんど出さないのだが、滅多に会わないひとや
ずうっと会っていないひとには丁寧な葉書を出している。
なので、こちらの近況を記して投函した。

Tさんは、毎年決まって干支の水彩画の年賀状をくれる。
毎年同じタッチで、文章も短い簡素なものであるがすごいのは
なんといってもすべてが手描きなのである。

結婚する少し前に、Tさんの画のモデルになったことがある。
律儀にモデル料もくれたうえ、仕上がった画も贈ってくれた。
その真心にはシビれたが、パッとしない絵であったので長い間しまってある。

さて、Tさんから近況が届いた。母ひとり子ひとりで暮らしているのだが、
昨年母上が入院し、家業は立て込み、胃を壊して痩せてしまったと書いてある。
Tさんは背が高くもともと細身だが、実業団でサッカーをやっていたらしく、
筋肉質である。そのうえ絵も上手で優しくて…となると相当モテそうであるが、
顔つきはラクダに似ているのだった。

性格ははっきりしているが態度は鷹揚で、カッコいいとはいえないけれど
一緒にいると和んだ。美術館へ行ったり、彼の絵の個展の手伝いをしたこともある。
お節介に友人を紹介しデイトさせたこともあったが、結局独り身だ。

お見舞いに早速お腹によさそうなものを見繕って送った。
節分の豆と板チョコ一枚もつけた。

数日後、Tさんから茶封筒に白無地の便箋が届いた。
おまけに彼の工房で作られた革製品のカードケースも入っていた。
「オリジナルのカードケースです。知りあいのお年寄りの方にでもどうぞ。
ご主人によろしく」

…まったく。ご主人ってアンタの友だちでしょ。
お年寄りにって、あたしにじゃなかったのかい!


独特のリズムの素朴すぎる手紙を読んで、伴侶とゲラゲラ笑った。

Tさん、調子がよくなったら、また一緒に飲もう。
お母さまにもよろしくね。
[PR]
by udonge7030 | 2014-01-22 21:34 | 日々のあわ

辛い事故がきっかけで退職、夫婦関係も破綻し長患いの友人とお茶を飲んだ。
求職中だが、なかなか仕事が決まらないという。がしかし、あまりヘコんでおらず、
むしろ今までになく朗らかだ。驚いたことに、彼女は恋をしていたのだった。

バツイチ同士。相手は幼なじみで申し分ないひとだけれど、仕事が超多忙なうえ
恋人がいるらしい。友人は言う。もう恋なんてしないと思っていたのにね。
いま、彼が好きというきもちに正直な自分がとっても好きなんだ。

はじまったばかりの欲のない恋は、自己肯定感を高めてくれるのだ。

お蔭で薬の量も減ったらしい。
天然のホルモン剤は、なによりの良薬だ。

恋、うまいこといくこといいな。でも、のぼせ過ぎると痛いからほどほどにね。
3Dの恋はアイドルにキャアキャアいってるのとは違うんだから。
でも、なんにもないより痛いめにあったほうがいいのかな?
え~い! なんでもいいから彼女にとって一番いいようにしてください(祈

思うに、たいていの女はどきどきやワクワクよりも、信頼や安心を求めている
んじゃなかろうか。がしかし、たいていの男はそれに気づいていない…
ような気がする。それって、あたしがファザコンだからそう思うんだろうか。

誰かさんのように いい歌はしらない
気持ちがブルーなとき お前の名をつぶやく程度さ
それで どうなる訳でもない

『たとえばこんなラヴ・ソング』 RCサクセション

こんな歌をぐるぐると口ずさんでしまう睦月。
[PR]
by udonge7030 | 2014-01-16 20:44 | 日々のあわ

キューティ&ボクサー

c0234001_1951893.jpg

年末年始にたくさん映画を観た。
ディズニーが思いがけず素晴らしくって涙がほろり儲けものだったけれど、
なんといっても一等賞はキューティ&ボクサーだ。事実はファンタジーを超えるのだ。

篠原有司男氏(うしお=ギュウチャン)はニューヨーク在住の前衛芸術家。
パートナーの乃り子氏は19才のときギュウチャンと出遭い、20才で息子を産んだ。

ギュウチャンの名は売れているが、生活はけっして楽ではない。
あるとき、ギュウチャンの作品を30万で買うという話があった。
妻はせめて100万くらいで売らなきゃ…と止めたが、ギュウチャンは言い出したら聞かない。
トランクに作品をいっぱいに詰め出かけてしまった。

でっかい重そうなトランクを抱えてゆくギュウチャン。
80代の身体のどこにあんなバカぢからがあるんだろう。
怒っているような、呆れているような、心配しているような表情の乃り子さん。
帰ってきたギュウチャンは満面の笑顔で札束を差し出す。じ~ん。

キューティは乃り子氏の分身であり、彼女の線描画のヒロインの名前である。
あるとき路上で「ヘイ、キューティ!」と声を掛けられてピンときたらしい。
(さすがアメリカ! がしかし乃り子さんはグレイのツインテイルが魅力的な
正真正銘のカワイ子ちゃんなのだ)

40年もの間、疾走するギュウチャンのサポートをしてきた。
異国での幼な妻の育児。裕福な実家からの仕送りも断たれ、言葉では言い尽くせない
想いをしてきたであろう乃り子さんのロマンの発露が「キューティ」だった。

Art is everything.

ふたりの火花は散る。

……………………………

後日、カッコいいキューティに感銘を受けてツインテールの三つ編みにしてみたあたくし。
伴侶はいいんじゃない? って言ってくれたけど、息子たちは「…やめなよ。」ですって。
オラオラオラ、この髪で参観日に行ってやる~と脅してやりましたが、われながら
たいした似合ってなかったので、シュン。子どもは正直デス。

渋谷のシネマライズでは「モヒカンとおさげのカップル割引」を実施中!
*篠原有司男氏は、日本で初めてモヒカン刈りにした方なのだそうです。豆知識。
[PR]
by udonge7030 | 2014-01-12 19:50 | 偏愛劇場

せつないとき

c0234001_2081090.jpg

図書館嘱託員の勤めもそろそろ二年になる。

選書やレファレンス(本の検索や提供、質問への回答)からクレームへの対応まで
面白いこと・大変なことはすべて職員さん(公務員)がやるので、嘱託員の仕事は
ほとんどその補佐である。

本が好き。図書館が好き。サービスが好きなので続けているが、官庁の仕事は創造性に
乏しいなと思う。几帳面なひと向きな仕事なので自分には向いているとも思えない。

でも私のいる児童室は、館内でも一番ハートが感じられる場所であり、多少は
創造性を発揮できる。あとどれくらいここに居られるかわからないけれど、
苦手なチームワークを育てる好機だと思っている。

嘱託員には勤続10年以上の先輩がゴロゴロいるが、素晴らしいのはキャリアが
あってもなくても関係性がフラットなこと。至らないと当然注意を受けるが、
嫌味や小言を言うひとはいない。職員の方々も偶然なのだろうか立派な方が多い。
私はここで少しは官庁を見直したといっても過言ではない。

夕方、返却カウンターに座っていたら、高齢の紳士がやってきた。
80代半ばぐらいであろうか。品よく謙虚で教養のある雰囲気の方である。
一連の対応が終わったところで男性曰く、「少しばかりお知恵を拝借したいのだが…」とのこと。
携帯メイルで宴会への出欠の返事を出したいのだが、どうすればよいかわからないと仰る。

ケチ臭いようだが、それは図書館の奉仕の範疇ではない。
やって差し上げたいのはやまやまだが、そのせいで仕事が滞ると流れが止まってしまう。
高齢者の中には、話し相手を求めて無為な質問を繰り返す方も居る。
取りあえず携帯電話のサービスカウンターへ行くことをお勧めした。

携帯と取説を持参してはいたが、使用することこともほとんどなくメイルアドレスの
存在も知らない風であった。見送ってからもしばらく頭から離れない。
ああ、代わりにやって差し上げられたらどんなにいいだろう。
せめて丁寧に詫びるべきではなかったか。

勝手な願いだが、その紳士が携帯電話の操作を習得できたら嬉しい。
きっと世界は広がるだろう。
もしも小さな職場であったり、個人事業だったり、あるいは通りすがりだったら…
私はきっとメイルの代行をしただろう。

サービスとはなんだろう。専門性とはなんだろう。
そのようなささやかな、簡単な必要性に応えられない立場がうらめしかった。
その紳士は常識はずれかもしれないが、悪くはない。自分も悪くないんだろう。
だけど…

日々こんなことにいちいち揺れながら、今日も一日が終わろうとしている。
[PR]
by udonge7030 | 2014-01-06 20:57 | どんげがゆく!

もらってばっか

伴侶には悪いが、(子どもを除いて)一番大事なのは誰かと問われたら、母親と答えるだろう。

年末に実家へ「もし布団が余っていたらちょうだい」と頼んだら、作って送ってきた。
布団やさんに注文したのだという。当然、手作りのおせち料理も一式付いていた。

わが母は無名だが、スーパーマザーである。
努力のの字は母のためにあるようなものだ。
ピアノや日本舞踊…自分にできなかったことをなんでもあたしにさせた。
母であることの歓びと悲しみを誰よりも噛みしめて生きてきた昭和の女。

でも、あたしは本当はもうなにも要らないのだ。

年末年始に、関係があまりうまくいっていない義母の気力の衰えを感じた。
いつもかならず嫌味を言うのに、なにも言わないので心配になってしまった。
きっと伴侶にとっても一番大切なひとは、やっぱり義母なのだろうと思う。
お義母さんには敵うまい。どうして今まで気づけなかったのだろう。

幾つになっても満たされない。幾つになっても寂しい。
好きなひとと結婚しても、子どもを何人産んでも、好き放題やってても渇望してる。
四十年余り生きてきて気づいたことはこんなだったよ。

がしかし、ひとりでいてもほんのり楽しくて、みんなといても群れず引きこもらず、
嫌なことは嫌と言えて、好きなことは好きと言えるなら上等じゃないか。

これで親孝行できたなら、言うことなしである。

c0234001_14515572.jpg

[PR]
by udonge7030 | 2014-01-05 14:59 | 日々のあわ

更新!

c0234001_1052132.jpg

夜、スーパーへ買いものへ出かけて戻ったら伴侶がいない。
あたしがなかなか戻らないので、心配して捜しに出かけたという。
なるほど、携帯電話も持たずに出かけたあたしが悪いんだろう。

ここのところ飼い猫は進化し、物干しざおの上を歩くので洗濯物が汚れてしまう。
ついでに干してある布団の上ものしのし歩くのでイラっとする。

がしかし、頼んでもいないのに心配してくれる愛情過剰な伴侶より、
なんにもしてくれないどころか、手がかかってしょうがない猫のほうがずっと好きだ。

そう言ってもニコニコ笑っている伴侶は大きい。
やっぱりアンタには適わないな。

今年も契約更新いたしましょう。よろしくね。


c0234001_10243240.jpg
[PR]
by udonge7030 | 2014-01-03 10:25 | 日々のあわ


酒と 歌が あるから