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桜梅桃李



せつないとき

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図書館嘱託員の勤めもそろそろ二年になる。

選書やレファレンス(本の検索や提供、質問への回答)からクレームへの対応まで
面白いこと・大変なことはすべて職員さん(公務員)がやるので、嘱託員の仕事は
ほとんどその補佐である。

本が好き。図書館が好き。サービスが好きなので続けているが、官庁の仕事は創造性に
乏しいなと思う。几帳面なひと向きな仕事なので自分には向いているとも思えない。

でも私のいる児童室は、館内でも一番ハートが感じられる場所であり、多少は
創造性を発揮できる。あとどれくらいここに居られるかわからないけれど、
苦手なチームワークを育てる好機だと思っている。

嘱託員には勤続10年以上の先輩がゴロゴロいるが、素晴らしいのはキャリアが
あってもなくても関係性がフラットなこと。至らないと当然注意を受けるが、
嫌味や小言を言うひとはいない。職員の方々も偶然なのだろうか立派な方が多い。
私はここで少しは官庁を見直したといっても過言ではない。

夕方、返却カウンターに座っていたら、高齢の紳士がやってきた。
80代半ばぐらいであろうか。品よく謙虚で教養のある雰囲気の方である。
一連の対応が終わったところで男性曰く、「少しばかりお知恵を拝借したいのだが…」とのこと。
携帯メイルで宴会への出欠の返事を出したいのだが、どうすればよいかわからないと仰る。

ケチ臭いようだが、それは図書館の奉仕の範疇ではない。
やって差し上げたいのはやまやまだが、そのせいで仕事が滞ると流れが止まってしまう。
高齢者の中には、話し相手を求めて無為な質問を繰り返す方も居る。
取りあえず携帯電話のサービスカウンターへ行くことをお勧めした。

携帯と取説を持参してはいたが、使用することこともほとんどなくメイルアドレスの
存在も知らない風であった。見送ってからもしばらく頭から離れない。
ああ、代わりにやって差し上げられたらどんなにいいだろう。
せめて丁寧に詫びるべきではなかったか。

勝手な願いだが、その紳士が携帯電話の操作を習得できたら嬉しい。
きっと世界は広がるだろう。
もしも小さな職場であったり、個人事業だったり、あるいは通りすがりだったら…
私はきっとメイルの代行をしただろう。

サービスとはなんだろう。専門性とはなんだろう。
そのようなささやかな、簡単な必要性に応えられない立場がうらめしかった。
その紳士は常識はずれかもしれないが、悪くはない。自分も悪くないんだろう。
だけど…

日々こんなことにいちいち揺れながら、今日も一日が終わろうとしている。
by udonge7030 | 2014-01-06 20:57 | どんげがゆく!
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酒と 歌が あるから