桜梅桃李



からすたろう

c0234001_117963.jpg息子(6年生)のクラスへ
本の読み聞かせにゆきました。
本日選んだのは、『からすたろう』。

物語の中にからすの声の描写があるので
練習していたら、息子にそれだけはやめてくれー
と念を押され、断念。(しかも上の息子にも
「やめなよ。子どものきもちを考えて!」と
釘をさされ。ぶう。)

からすの声は諦めましたが、練習を重ねて挑みました。子ども相手はなにせ緊張するものです。







勤務先の図書館では、返却された本を一冊一冊かならずチェックします。
当館の本か?(ときどき自宅の本、他市の本が混じっていることも
なかになにか挟まっていないか?(写真。手紙。請求書。お菓子のくず!…
汚れた本はふき、壊れた本は修理や買い替えし、書架へ戻します。

さて、『からすたろう』ですが、なにせ表紙が個性的で、全体的に地味です。
そんなわけで全く魅力を感じませんでしたがある日のこと、返却本の
チェックをしていました。ついでに少し読みました。全部読みました。
そうして泣きました。いまも、手に取るたびに学芸会のシーンでかならず
泣いてしまうのです。

読み聞かせの際には「絶対に泣かないように」ということだけ気をつけました。
選択の理由は、
①普遍的な内容である
②子どもたちにとってこれ以降の人生で出逢うことはないかもしれない。
  「たろう」はちょうど6年生、まさにうってつけ。
➂大好きな絵本。押しつけたいほどに。

作者のやしまたろうさんは、戦時中左派だったため身の危険を感じ、
アメリカへ渡ります。戦後は絵本を次々と発表し高く評価されました。
しかし、この本が日本で出版されるのは20年後のことでした。

作中の磯辺先生のモデルは、やしま氏のふたりの恩師だそうです。
そして、『たろう』のモデルは、子どもの頃の友人だと言われています。

新任の磯辺先生は、いつもひとりぼっちで、勉強ができず「ちび」と
馬鹿にされている「たろう」のユニークさ、生活の背景を知ってゆきます。
そして学芸会で、たろうの得意な「からすの鳴き声」を紹介したのでした。


「烏のなきごえ」

はじめに ちびは、かえったばかりの あかちゃんがらすを まねました。

つぎに かあさんがらすの なきごえを まねました。

それから とうさんがらすの なきごえを まねました。

あさ はやく、からすは、どんな なきかたを するのか、してみせてくれました。

また、むらのひとに ふこうが あったとき、どんなに なくかを してみせてくれました。

からすが うれしくて たのしいときには、どんなふうに なくかも
してみせてくれました。

だれの こころも、ちびが まいにち かよってくる とおい 山のほうに
つれてゆかれました。

おしまいに、いっぽんの ふるい木に とまっている からすを まねて、ちびは
とくべつの こえを だしました。「カアゥ ワァッ! カワゥ ワァッ!」

こんどは だれもかれも、ちびが すんでいる、とおくて さみしい ところを
はっきりと そうぞうすることが できました。


『からすたろう』 やしま たろう文・絵 (偕成社)より抜粋~


思えば、自分も少し変わった子どもでした。たいした目立ちもしなかったので、
馬鹿にされてはいなかったと思いますが、ぐずで、忘れ物が多く、女子という
自覚に乏しく、非常にマイペースだったので、祖父からはなまくら(怠け者の意)
と言われていたのです。

しかし、折々に出逢った先生は、あたしを可愛がってくれました。
担任の先生、日本舞踊の先生…。もうとっくに引退し所在もわからず、
亡くなったかたもいますが、しばしば懐かしく思い出すのです。

美しさは、いつも他者によって見出される。
一見ぱっとしない子も、めぐりあわせによって活き活きと輝くことができる。

恩師は磯辺先生のように素晴らしいわけではなく、ダメな先生もいましたし、
欠点だらけの方もいました。でも、たいていの先生は好きでした。
そんな先生への憧れが、あたしを講師業へと導いたのだと思っています。

(運動系の講師を辞し、その仕事にはまったく未練はありませんが、
またいつか「先生」ができたらいいなと願っています。)

『からすたろう』は、子どもがおのずから手に取ることは稀でしょう。
ひとりでも多くのおとなが、この本に出逢えることを祈りつつ。

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それにしても6年生、女の子はどんどん色っぽくなって、どきどきします。
男子はまだまだ子ども… わが子なんてやせっぽっちでまるで 蚊 のようです。

小学生時代を思う存分楽しんでね。
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by udonge7030 | 2013-06-20 11:12 | 未司書の世界
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酒と 歌が あるから