友人と、婿入りした『どん』に逢いにゆく。
かがんで近づくと、どんは後ろ足で立ってチュウをしてくれた。
おお、歓迎してくれてる!
婿入りのとき、息子にこう言われた。
「一番可愛がっているのに、どうしてあげちゃうの?」
たしかに、子どもからみると不可解だったろう。
どんは、ひとと通じやすい猫だった。
残りの2匹は、当時お馬鹿さんであった。友人を困らせたくない。
猫は役になんか立たなくても、そこにいるだけで豊かで美しい存在だけれど、
そのうえ『どん』ならなにか役に立つに違いないし、相性もよいと直観したのだ。
しかし、今回話を聞いて仰天した。
「本当は気が進まなかったし、自信もなかったし、実際なんどか返そうと思った。」
という。友人は天使のようにまっすぐなひとだったから、鈍感なあたしは彼女が
ひとり思い患っていたとは夢にも思わなかったのだ。
家族が増えるということは、新しい縛りができるということだ。
それは猫でも赤ん坊でも代わりがない。
たとえばわが家では、皮のお財布がぼろぼろになり買い替え、花瓶の花はむしられ、
ゴミ箱を漁られる・・・という具合。
初めての育猫でどうしてよいかわからない友人は、ささいなことに
「うちの猫はどこかおかしいのではないか」と気にしたり、汚れが気になりはじめ、
除菌スプレーで隈なく掃除をしていたという。あるとき叱りすぎた後悔で泣いていたら、
『どん』がやってきて涙をぺろっと舐めたので、ますます罪悪感にかられたのだという。
さすがに三月も経つと自信もついてきたようだが、黒毛のところどころに白い毛を見つけ、
ストレスで白くなったのでは不安になり、「直美姐さんが気づいたらどうしよう」と
思っていたらしい。(白毛も生まれつきなんだよ~
自分のほうも早く逢いたかったのだが、顔の湿疹に悩まされており、
きもちに余裕がなかった。そんなとき、友人が舞台で男らしく唄っている夢を見た。
本人も舞台で唄っている夢を見たという。夢の意図はわかんないけど逢いたいね、
じゃあ明後日、とようやく再会できる運びとなった。
『どん』は、いまでもおしゃぶりをする。友人の指を恍惚としながら舐め続けるのだ。
わが家にいた頃は、妹猫のあごのあたりをハゲるほど舐めていたし、
ひとの耳たぶ、乳首(!)、内腿…と柔らかいところをいつまでもちゅうちゅうするので
寝苦しく、手や足で払ったものだ。
どんは、そうやっておしゃぶりしながらペニスを出すようになったという。
猫のペニスは短く、赤い色をしていて三角に尖っているらしい。
残念ながら自分はいまだかつて見たことがない。
猫の交尾の時間は二秒から五秒であっという間、交尾時の刺激で排卵する
しくみだそうだ。
誰かさんじゃあるまいに、猫が交尾時以外にもペニスを出すなんて!
『どん』は甘えん坊だが、2人きりにならないとおしゃぶりしないということも
最近判明した。あたしも試しに迫ってみたが、ちっともなびいてはくれない。
どおおおおおおおおおんんん~~~~~ん~~~~~~!!(哀
(つづく
仔猫時代のどん。