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追悼 土田世紀『同じ月を見ている』

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どんげです。

去る4月、漫画家の土田世紀氏が肝硬変のため逝去しました。
あたしと同世代、43才の若さで。なんとなく胸がざわざわしたので、
勤務先の図書館にて『同じ月を見ている』(全7巻)を借りました。
(図書館にはこれしか置いてないけど、とても多作な方です。

同作品は、平成11年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。
のちに映画化もされています。

主人公のドンちゃんは貧乏で母は死去、父は酒乱。
バイトが忙しくて学校も休みがち。いつも空腹で、ひとづきあいも
勉強も不得手で馬鹿にされています。

しかし彼には、他者の本当のきもちがわかる不思議な能力、
そして絵を描くことにかけてハンパない才能があるのでした。

そんなドンちゃんを慕う心臓に病を持つエミ、医者志望のテッちゃんとの
三角関係をベースに、物語は繰り広げられてゆきます。
ドンちゃんの短い生涯は、どこか宮沢賢治の世界と重なります。

(以下、ドンちゃんのセリフより抜粋)

「しょうがないよ。傷つけないひとも 傷つかないひともいないよ。」

「エミ… さっきのは 永遠の場所じゃない
そう呼べるものは あすこ(地球)で 自分で見つけるしかないんだ。

たった一人で 誰よりも苦しんで 誰よりも傷ついて
受け入れて 手放して 

その時と その場所が… 永遠なんだよ。」 


あるひとが、言いました。
ドンちゃんの姿を見ているうちに、ドンちゃんが鏡となって、
自分の醜さが映って見えてくる、と。

あたしは、こう感じました。
ドンちゃんは菩薩心のかたまりだから、ひとの醜さの奥の奥の
仏が反応するんだろう。ドンちゃんと関わったひとはみんな、
にごりをへて澄んでゆく。

あたしのなかに、ドンちゃんがいる。
みんなのなかに、ドンちゃんがいる。
どんなひとのなかにも、仏性がある。
地獄 餓鬼 畜生 修羅… 蓮は泥の中に咲く。

1999年当時の作者曰く、
~周りから古風とか、泥いとか評価を固められつつあるオリ。
へばよ、逆に何が新しいのか聞きたいもんだな。
オリは『同月』を未来の読者に向かって描いてるつもりなのよ。~

土田世紀様。ここに、ちゃんと未来に届いてますよ。
結局、全巻買っちゃいました!
このたび、祈りをこめて、どんげ漫画大賞を捧げます☆

さいごに、きょうは満月で部分月食 だから質問。

月を眺めながら、誰を想いますか?


*画像は AstroArts より拝借しました
by udonge7030 | 2012-06-04 05:48 | 未司書の世界
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酒と 歌が あるから