雷神(鳴る神)の 少し響みて さし曇り 雨も降らむか 君を留めむ
~雨が降ったら、あなたはここに留まってくれるだろうか…
いまの季節ににぴったりの、
素敵なアニメーションを観ました。
アニメは好きだけど、絵が萌え系だったりすると少し萎えてしまいます。
しかし、これは短い作品なのですが、絵の構図も脚本も本当によくできていて、
何度観てもほうっとためいきが出るのです。
都心の日本庭園。
雨が降るときまって午前に学校をさぼる靴職人を目指す少年と、
こころに傷を負って職場へゆけない女性が、ひとつの東屋で雨宿りしながら
過ごすひととき。
約束も絆もない、孤独な2人がちょっとづつ、少しづつ距離を縮めてゆく。
そんな過程が哀しく美しく描かれています。
今まで 生きてきて いまが
今が一番 しあわせかもしれない…
見慣れた都心の風景が、こんなにも新鮮に映るなんて。
たとえば、広告の使いかたにも生活感があって、全然あざとくないのです。
これはスポンサー冥利に尽きるだろうなあ! な~んて思ったりして。
まっすぐな十代の男の子の眩しさ。大人の女の脚線の魅力。雨季の緑のみずみずしさ。
爽やかな色気があって、でもとってもいいところで終わってしまうのです。
音楽も賑やかしくなく全編に余白が、余韻があって、観る側に展望を託されるような、
静かだけど非常にちからのある映画でした。
ちなみに高校生の息子に観てもらったら、「難しかった~」と言いながらも
魅入られていたようです。息子はガンダムファン。あたしはガンダム世代だけど
まったく接点がなく話もあわないのですが、やっぱりいいものはいいんだな。
主題歌は、大江千里さんの『Rain』。作品ににぴったりでぐっときます。
今回は秦基博くんが唄っていますが、このひとの声すごく好きなんだな。
(どこかで槇原敬之さんも唄ってるんだけど、そっちもいいです。
槇原さんは顔も声もけっこう好きですね。あはは、余談でした。)
むかし、日本には恋愛という概念がなく、恋を「孤悲」(こひ)と書いたそうです。
遠くに居るひとのしあわせをそっと祈るような、胸の奥でちくっと痛むような、
そんな柔らかなきもちを想い出しました。
来る七月は、ふみの月。
誰かに手紙を書いてみようかな。
雷神(鳴る神)の 少し響みて 降らずとも 我は留まらむ 妹し留めば
~雨なんか降らなくても、ここにいるよ…
*文中の太字は万葉集の中の歌を、映画『言の葉の庭』の台詞より拝借しました